輪廻ノ空-新選組異聞-
……最悪だ。
女からそんな事を言い出すのは、沖田さんにとっては許せないんだ…。

私は心の中で絶望に充ちた溜息をついた。

「その娘さんがですね、それを苦にして…自害を図りました」

…………自害?

「…っえ?」

私は思わず沖田さんの顔を見ていた。

「短刀で喉を突いて、死のうとしたんです」

でも傷が浅かった事、発見が早かった事で、命は取り留め、近藤さんの計らいで他所に出されました。

「可哀想……」

思わず口にしたわたしの隣で、沖田さんはうな垂れるような格好で溜息をついた。

「そうですよね、皆にも言われました。私は…娘さんに対して、安易に酷く可哀想な事をしました。でも…私なりに…この事は…おなごの激しさを知らされて…恐怖になりました。だから…」

は?

わたしは驚いて沖田さんの言葉を遮った。

「ちょっと待ってください!」

沖田さん、と私は沖田さんに詰め寄った。

「可哀想なのは、沖田さんじゃありませんか!」

「え?」

今度は沖田さんが驚いたようにわたしを見つめ返した。

「そんな女に苦しめられて」

沖田さんが可哀想!!

「本当に沖田さんの事を好きだったら、断られたからって、死のうなんて考えませんよ。だって、そんな事をしたら沖田さんが傷つく事ぐらいわかります。自分を振った沖田さんへの当てつけじゃないですか、自害なんて」

私は更に言葉を継いだ。

「沖田さんが悲しむとか、そういう事を考えなかった。振られて自分が可哀想、なんて恥ずかしい、死んで消えてしまいたい、なんて考えるのは、沖田さんではなく結局自分の事が一番好きだったんでしょうよ!」

言ってるうちに腹が立ってきて、プンプン怒りながら叫んでしまった。

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