輪廻ノ空-新選組異聞-
うう……。

泣けてくる。
勝手に涙が溢れてこぼれた。

「泣いてちゃ分かりませんよ。
 何でも言ってください。
 私はあなたが誰もいなかった
 場所に降ってくるのを目撃した。
 だからもうこの際何を言われても
 驚きゃしませんよ」

沖田さんが口を開いた。

「だいたい…
 男かと思えばおなごだし、
 裸みたいな格好に平気でなるし」

ぶつぶつと眉をひそめて、視線はわたしに合わさず言い募る。その様子がなんだか可愛くて。思わず笑ったら、ちょっと睨まれた。でも、気持ちは少し楽になって。


あの、ええと…、と私は呼吸を調えてから、目の前に座っているトシさんに視線を向けた。

「ここがブンキュー三年なら…。私はここから…約…二百年先の時代の人間です」

何か証明出来るもの…と思って、ジャージのポケットに財布が入っている事を思い出した。……というよりさ、このジャージ自体この時代にない布で出来てるよね?

とりあえず、と財布を脱いだジャージのポケットから出した。
お札って年号書いてあったっけ…。
とりあえず、小銭…。

ジャラジャラと畳の上に広げる。

「これ…お金なんですけど…。年号書いてありますよね」

手にした500円玉の年号を確認しながら差し出す。

「平成ってなってますよね。で、こっちの十円玉は昭和」

10円玉も渡す。

「なんだ、こりゃ…。これが銭、なのか?」

「すごい…。細かい意匠が施されてますね…」

覗き込んだ沖田さんが驚いたように言う。

「偽物ってぇ訳でもなさそうだな」

2枚の小銭を叩き合わせて金属であるのを確かめたコンドーさんも呟く。

で?とトシさんは私を睨んで。

「平成やら、昭和とやらは文久からどう繋がるんだ」

は?

ええっ!?

「れ、歴史、は、苦手で…。
 その……」

しどろもどろになる。
もっとちゃんと勉強しておくんだった…。

「平成の前が昭和でしょ。昭和の前が……えーっと、おじいちゃんが生まれたじゃん、何だっけ…。あっ、大正。で、その前が明治だよ、そうそう!明治の前……」

明治維新って言うぐらいだから、…明治の前が幕府の世の中なんだ。じゃあ…ブンキュー?違うよね…。
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