BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
祥真はいつだって自分を助けてくれた。
 大事なのは、彼がどう思っているかよりも、自分の気持ち。

 自分のなかの彼は、どのくらい大切な人なのか。

「だって、あいつあんなにモテるタイプなのに浮いた話ひとつも聞いたことがないし。なんか想像つかないんだよな。あいつが恋愛にのめり込むのが。すごく淡泊そうっていうか……」
「それは違いますよ」
「え?」

 いつもおどおどとしていることが多い月穂が、しゃんとして即答するものだから、夕貴は戸惑った様子だ。

 月穂は澄んだ瞳を夕貴に向け、小さく首を横に振った。

「彼は本当は淡泊な人間なんかじゃない」

 自分は知っている。
 他人とは違うと思い悩みながらも、パイロットの仕事に真摯に向き合い続けている祥真を。

 彼の心をほんの少し支えただけで、律儀に恩返しをしようと度々助けてくれた祥真の優しさを。

 それらは、淡泊だとかクールだとかいうものにそぐわない行動で、むしろ情熱的な言葉をたくさんくれた。

「彼も私たちと同じように、もがいて苦しんでて……それでもどうにか前に進んでいこうと頑張っている。情熱を内に秘めた人だと思います」

 祥真に惹かれたのは、そういうところだ。

 これまでの彼を思い出すだけで、月穂は胸が高鳴る。

「それは、私が彼を好きだからとか関係なく、客観的に見ていてそう感じるんです」

 自分の思いをすべて伝えたが、夕貴からはなにも反応はなかった。

 少しして、ようやく夕貴が開口する。

「足、ずっと立ってたらつらいでしょ? もう帰ろう。送っていくから」

 まるでなにもなかったように、いつもの笑顔でそう言われた。
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