BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
昨日も、新着メッセージが乃々だとわかると、そのまま携帯を放置しようとした。
 しかし、ふと思いとどまった。

 互いに個人の連絡先を知らない現状のため、月穂からの連絡を待つほかない。
 もしかしたら月穂も同じように想っていて、乃々伝いになにかメッセージを送ってきたのかもしれない。

 浅はかだが、そんな考えが頭を過り、乃々からのメッセージを開いたのだ。

【大和さんが急に、通勤が大変で来週からUAL社へは行かない、と言っていました。私はちょっと無責任じゃないかと思ったので、せめて……と思い、隼さんにお知らせします】

 その中身は祥真が想像したようなものではなかったものの、驚くような内容に受信画面を凝視した。

 咄嗟に「は?」と声を漏らしてしまうほど驚いた。

 メッセージはこう締めくくられていた。

【隼さんは大和さんの連絡先はご存じないんですよね? もしなにか用があれば、私が言伝しますから、遠慮せずに連絡くださいね】

 最後の一字まで目で追うと、端から信用せずに鼻で笑ってメッセージ画面を閉じた。

 月穂は仕事を途中で放棄したりするタイプではない。

 そう思う傍ら、会えずに終わった金曜日のことが、祥真の心を揺さぶる。
 途中で会ったらしい夕貴を優先させたということがあるから余計だった。

 祥真は携帯をジャケットのポケットに入れる。
 フライトケースを手に取ると、靴に足を通した。
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