BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「それで、怪我したときの違和感はその看護師が理由なんだって直感したの」

 祥真はもうなにも言わず、ただ花田の言葉に集中する。

「ふたりの間になにがあったかまではわからないわ。でも、どんな理由があったにせよ、大和さんに怪我を負わせた一因は自分にあって、涼しい顔して『具合はどうですか』だなんて聞いてくる神経が癇に障ったのよ」

 そのときの花田は、さっきまでの上司としての仮面が外れ、ひとりの女性として月穂を心配しているふうに見えた。

「とはいえ、理由がわからないから、それ以上彼女を責めることも言えないまま、逃げるようにいなくなっちゃったわ」
「あなたはいったい……」

 思わずそう聞いていた。

 普通に考えて、月穂が再就職してからまだ三か月も経っていないのに、こんなに月穂に入れ込むような発言はありえない。
 絶対になにかあるはずだ。

 祥真は確信し、今度は花田に話を逸らされないよう目で訴える。
 すると、花田が雨上がりの雲から覗く晴れ間のように、穏やかな笑顔を返した。

「私が今日、大和さんに内緒で隼さんにこの話をしにきたわけは、あなたが彼女を大切にしてくれる人だと思ったからです」
「会ったこともないのに?」
「大和さんの言葉と表情で十分わかります。まあ、ちょっとだけあなたの上司にも探りを入れさせてもらったけれど」

 少し距離が縮まったと感じられる口調に、祥真も幾分か肩の力が抜ける。
 花田は祥真に一歩歩み寄り、やおら見上げた。

「大和さんは今回のことを、自らあなたへ言うことはないでしょう。だけど、そういう彼女をきちんと知ってほしかった」

 祥真は花田の言い分をきちんと耳に入れながら、頭の隅で彼女の正体を考える。
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