BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
その日、月穂は品川駅で祥真を待っている間、ぼんやりとしていた。

 遡ること四時間前。月穂が残業を終え、ロッカールームから出ようとしたときだった。
 立ち憚るように、乃々が現れた。

 祥真の事故の日以来、再び顔を合わすことはなかったのだが、突然狙っていたかのごとく、目の前に現れたのには驚いた。

 月穂が足を揃えて乃々の出方を待っていると、極まりの悪そうな顔でちらりと視線を向けられた。そして、彼女は言った。

『怪我をさせてごめんなさい』と。

 ほぼ言い逃げしていってしまった乃々を、月穂は茫然として見続けた。

 今でも、怪我のことで乃々を責める気持ちはない。
 ただ、急に乃々が謝罪をしにくるなんて、彼女の中でどんな心境の変化が起きたのだろうかとふと思う。

 どんな理由だったにせよ、また次に職場で顔を合わせたときは自分も一歩を踏み出し、笑って話しかけてみよう。

 月穂は密かにそう決意したときに、祥真が現れた。
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