BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
明日はふたりの想いが通じ合ってから初めて、ふたり同時の休日だ。

 祥真のマンションに着いてリビングに入るなり、月穂が紙袋を渡す。

「これ、タイミング逃してそのままで……ごめんなさい」

 祥真が紙袋を受け取って中を覗き込む。
 それは、以前雨に降られたときに借りた、祥真の服だった。

「ああ。忘れてた。今日また使ったら?」
「え……。あ、でも今日はちゃんと着替えを持ってきてて」
「そっか。残念」
「残念?」

 月穂が不思議そうに言うと、祥真はなにかを思い出して笑い始める。

「裾を何回も折り曲げて、それでもぶかぶかで着てた格好が可愛かったから」
「かっ、かわっ……」

 口をパクパクとさせて顔を赤くしたときに、祥真の携帯が鳴った。

「夕貴? なんか用?」

 ディスプレイに出ている名前で着信主がわかると、やや素っ気なく電話に出た。

『冷たすぎるぞ。なんだよ、もしかしてデート中?』
「ノーコメント」

 月穂はあれから夕貴とは会っていない。だが、避けているわけではなく、会う機会がなかっただけだ。

 祥真もまた、夕貴とフライト予定のすれ違いから顔を合わせていなかった。
 この電話が、あの日以来の連絡だ。

 祥真は夕貴に対し、まったくなにも感じないわけではない。
 月穂の伝言を黙っていたことはもう気にしていないが、自分が月穂と一緒にいることに多少なりとも罪悪感を持っていた。
< 162 / 166 >

この作品をシェア

pagetop