BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
堪え切れなくて月穂の腕を押さえると、頭を傾け、月穂に近づけた。

「えっ。あ、んっ」

 月穂は不意打ちで唇を塞がれ、困惑する。心の準備もないまま奪われて、うまく息ができない。

 時折口が離れたところで、それはほんのわずかな時間。
 角度を変えては重ねられるキスに、だんだんと力が抜けていく。

 強引に始まったキスだが、祥真の気持ちがこもっているせいか月穂を蕩けさせ、今や求められるがままに小さな口を差し出している。

 強張っていた全身もいい具合に脱力していて、月穂は祥真の広い胸にもたれかかった。

「俺で少し落ち着くようになった?」

 祥真は冗談めかしてそう言った。
 それは先日、月穂の『魔法の薬』の代わりになると宣言したことだ。

「ち……力は入らないんですけど、心臓はバクバクしてる」

 月穂はぽつりと漏らした後、恥ずかしさで口を引き結んだ。

 ――『今のあの子には、ちゃんと心の拠り所がある』

 ふと、祥真の脳裏に花田の言葉が過る。
 祥真は月穂の心の拠り所になりたいと心から思った。

 改めて自覚した祥真は、月穂を抱きしめる。

「身体も心も全部、俺に預けろよ」

 懇願するような声色に、月穂は驚いて顔を上げる。

「ずっと大切にするって約束するから」

 その言葉とともに、キスの雨が降り注ぐ――。
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