BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「この間の合コンさ。大和さん、付き合わされて来たんでしょ?」
「えっ。あー……」

 月穂は夕貴の鋭い指摘に言い淀む。嫌々参加していたようなことを認めれば、夕貴に対して失礼だと思うとどう答えるべきなのか悩んでしまった。

「そんな気してたんだよね。あ、でもだからって嫌な感じだとか怒ってるとか、まったくないからね」
「す、すみません」
「なんで謝るの? そういうことって、よくあることでしょ」

 月穂にとって、この間が初めての合コン。
 そのため『よくあること』と言われてもピンと来ない。

 おもむろに首を捻り、不思議そうに声を漏らす。

「はあ……」
「あはは。やっぱり大和さんって真面目だね」

(『やっぱり』って、なんだろう)

 頭の中には疑問符が浮かび、なにも言葉を返せない。
 月穂が困っていると、夕貴は笑って月穂の目を覗き込む。夕貴の顔が思いの外すぐそばにあって、月穂は咄嗟に後退った。

「じゃあ時間もないし、早速カウンセリングお願いしようかな」

 月穂が一度冷静になろうと深呼吸をし、カウンセリングが始まった。
 カウンセリング中は、所々垣間見える夕貴の人懐こさに、自然と話が弾んだ。

 十分程度のカウンセリングが終わり、夕貴は席を立つ。月「お疲れ様でした。お仕事、頑張ってください」

「ありがとう」

 月穂はパタンと閉まったドアを見つめ、ほっと息を吐き、病院で言うところのカルテと同じカウンセリングシートを見つめた。

(初対面のときに感じた通り、話しやすい人だった)

 次の瞬間、月穂の頭に浮かんだのは祥真だ。

(あの人は、普段どんな感じで話をするんだろう)

 ロサンゼルスで言葉は交わしたことはある。だけど、日本で再会したとき、彼とはひとことも話さなかった。

 月穂は、まだ祥真がカウンセリングに来る日も決まっていないのに今から緊張してきてしまい、思わずタブレットをもうひと粒口に放り込んだ。
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