BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
 その日、業務を終えてUALを出ようとしたときに、廊下で夕貴を見かけた。

(朝から出社していて今もここにいるっていうことは、今日は国内線で、もうすぐ仕事も終わりかな?)

 少し大きな声を出せば届くような、微妙な距離に夕貴はいる。
 今日はカウンセリングもしたわけだし、挨拶をしようかと思った矢先、壁の死角から祥真が現れた。
 月穂は今にも声をかけようとしていたところだったのに、驚きのあまり言葉も引っ込んでしまう。

(制服姿……やっぱり似合ってる)

 肩章に金のラインが三本入った真っ白なワイシャツを纏う祥真が、とても眩しく見える。
 べつに今、パイロットの制服を間近で見たわけではない。それなのに、なぜか祥真の制服姿に見惚れていた。

 不意に、祥真が涼し気な目元を柔らかく細めた。夕貴と雑談しているからだろう。見たこともない彼の笑顔に惹き込まれる。

(……びっくり。あんな顔するんだ)

 月穂は瞬きも忘れ、食い入るように祥真を目で追っていた。あっという間にふたりは遠ざかっていってしまい、完全に見えなくなったところで我に返る。

「あ……。挨拶忘れちゃった……」

 ぽつりとつぶやき、踵を返す。

 祥真のことは、クールで近寄りがたい人だと思っていた。

 ロサンゼルスで助けてもらったことはあるから、根はいい人なのだと知っている。けれども今、夕貴に見せていたような笑顔は知らない。

(すごくいい顔して笑ってた。また見てみたい)

 月穂は今まで以上に祥真が気になり始める。
 駅に着いて電車に乗ってもしばらくは、祥真の笑顔を思い出すと鼓動が速くなった。
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