BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「冗談かと思ったけど、本当だったのか」

 長い足を組み、やや横柄な態度を見せる祥真は、この間夕貴の隣で爽やかに笑っていたときとは別人だ。
 それでも月穂は表情を崩さず、冷静に尋ねる。

「冗談といいますと?」
「夕貴に聞いてた。うちに配置されるようになったカウンセラーが、あの飲み会に来ていたうちのひとりだって」

 祥真は目も合わせずに淡々と話をする。でも、月穂は嫌な気持ちになったりはしない。この仕事は、普段からわりとそういうことが多いからだ。

 むしろ、合コンではまるで興味がない様子だった祥真が、自分の話題を出したのだから、うれしい誤算だとすら感じた。

(本当にシャットアウトされたら話にもならないし)

 月穂は会話を引き出すチャンスかと、満面の笑みで答えた。

「はい。本当に偶然ですが。櫻田さんが話をしてくださっていたんですね」
「社員に通達された内容は、カウンセリングを最低一回受けろっていうことだった。でも、夕貴は合間を見てまたここに来ると言っていた」

 合コンで薄々感じてはいたことだが、祥真と夕貴は仲がいいということは先週確信した。

 夕貴の人柄からは、どんな相手とも話ができることが想像できるけれども、今のところ祥真は、夕貴のように誰とでも打ち解けられるような雰囲気は感じられない。
 心を開いた限られた相手だけと話をしそうな感じだ。

 そんな祥真が自分に夕貴の話をするということは、それなりに関心を持たれているからかもしれないと考える。

「それはうれしいですね。ここで話をしていただいて、気分転換のきっかけになれたら……それは本望ですから」

 月穂は祥真の向かい側のソファに浅く腰をかけた。すると祥真は肘掛けに腕を乗せ、あたかも月穂を避けるように頬杖をついて明後日のほうを向く。

「俺には理解できないけどね」
「そうですよね。感じ方も考え方も十人十色ですし」
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