BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
 週が明けて月曜日。
 月穂は、その日最後のクライアントを迎え入れ、柔らかな物腰で挨拶をする。

「初めまして。大和と申します」

 相手は五十代の男性パイロット。白髪交じりの髪は耳を半分隠すほどの長さで、ここ最近は手入れを怠っているように見受けられる。

 彼は月穂の挨拶に反応もせず、部屋の中央へ歩き進めた。

「コーヒーと紅茶とハーブティーをご用意できます。いかがなさいますか?」

 やはり男性は月穂の言葉に見向きもせず、黙って窓の向こうを眺めている。月穂はその姿に祥真が重なり、一瞬だけ仕事を忘れた。しかし、すぐに我に返り、男性の左側へ立ち回る。

「小田さん。どうぞソファにおかけください」
「あ、ああ。ありがとう」

 小田は少々驚いた顔をして、ソファに腰を沈める。

「お飲み物はなにが……」
「なんでもいいです」

 すぐに反応が返っきて月穂はにこりと微笑み、ハーブティーを用意した。
< 28 / 166 >

この作品をシェア

pagetop