BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「それ……本当に褒めてます?」

 まるで、なにも考えないで突っ走る無謀な人間だと言われたようで、なんだか素直に喜べない。

 じとっとした目を向けると、祥真は真面目な顔をして聞いてくる。

「今日……小田さんと話したんだろう? オフィスで君の部屋に入るのを偶然見かけた」

 慎重だと言う彼が衝動に任せてまで尋ねるのだから、小田のことを相当気にかけているのだろう。

 月穂は祥真の気持ちを察したが、ぎゅっと口を結んだ。
 すると祥真は「ふっ」と笑いを零す。

「そりゃそうか。君には守秘義務ってやつがあるもんな」

 祥真の笑顔に胸が痛む。

「元気だったか……?」

 彼は視線を落とし、ぽつりと聞いた。今、自ら『守秘義務』という言葉を放った直後なのにもかかわらず、それでも小田を気にかけるところを見ると、やはり祥真にとって特別な存在だと確信した。

「それは……」

 月穂は一度祥真を見たものの、再び俯いた。

「それは、ご自分で直接お会いになったほうが早いと思います」

 本当は、心身ともに疲弊している小田の様子を教えたい。しかし、そうすると違反になるし、小田を裏切ることにもなる。

 そんな苦しい思いで口にしたせいか、声のトーンも暗くなってしまった。『冷たい』と受け取られたかもしれないと心配する。
 月穂はそろりと祥真を窺った。

「確かに」

 彼の少し寂しそうな微笑みは、その日、月穂の脳裏にずっと残った。
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