BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「あれ? もしかして指、怪我してます?」
「あ、本当だ。さっきうっかり書類で切っちゃったんだ。今頃血が出てきたんだな」

 一センチほどの切り傷を見て顔を顰めたのは月穂のほう。
 月穂は白衣のポケットに入れていた小さな救急セットから、すぐさま絆創膏を取り出す。

「私の絆創膏でよければ」
「わ。準備がいいな。ありがとう!」

 月穂は絆創膏を貼ってあげようとごく自然に包装を開け、そのまま夕貴の人差し指に絆創膏を巻く。

 月穂はこの間まで小学校でスクールカウンセラーをしていたこともあり、子どもへの対応と同じように行動したのだが、そんなことなど知らない夕貴は一瞬戸惑ったようだった。

「えっ、あ、大和さ……」
「フライトに支障出ませんか? 指一本でも意外に生活に影響出たりしますし」

 深刻そうな顔をして心配する月穂に、夕貴は頬を緩める。

「はは。このくらい平気だよ。それに、どんなことがあっても、しっかりと操縦かんは握る」

 夕貴の言葉でまた思い出してしまったのは祥真だ。

 『毎回数百人の命を預かって仕事をしている』と話をしていた彼が、月穂の脳裏に鮮明に蘇った。

「じゃ、もう行くね。絆創膏ありがとう」

 夕貴の声にハッとし、笑顔を浮かべる。

「いいえ。では、お気をつけて」

 月穂は目の前の夕貴に意識を向け、軽くお辞儀をして見送った。
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