BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
 月穂はデスクで首をゆっくり回し、腕時計を見た。

(もうお昼か)

 腕をグッと上に伸ばし、息をつく。持参したお弁当でも広げようかと思ったところへ、ドアをノックされた。

「はい。どうぞ」

 月穂はお弁当をまたカバンの中へ戻し、席を立った。すると、予想もしない相手がドアから顔を覗かせ、思わず固まった。

「なんて顔してるんだよ」
「あっ……。す、すみません。ちょっと驚いてしまって……」

 半ばあきれ顔で部屋に入ってきたのは祥真。月穂は未だに驚きを隠せず、その場に立ち呆けていた。

「今週のシフトは国内線なんだ。今日はたまたま昼の時間が空いてたから」
「ああ。そうなんですね……」

 平静を装って返事はしたが、内心ではまだ引っかかったまま。

(どうして彼が、またここへ?)

 月穂がそう思うのも無理はない。

 なぜなら、祥真はつい最近カウンセリングを受けたばかりだし、なにより『またカウンセリングを受けたい』という夕貴の言葉に、『理解できない』と言っていたからだ。
 社内の通達でも試験的に導入したこのカウンセリングについて、【最低ひとり一回】と知らせていたのだから、絶対にもうやってくることはないと思っていた。

「ええと、なにかお話があってきてくださったんですよね? そちらにどうぞ」

 どこかぎくしゃくしながらソファを勧め、お茶を用意するために背を向ける。
 気持ちを落ち着けなければ、とこっそり深呼吸を繰り返し始めたときに、祥真が答えた。
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