BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「話というか……そう。あれ以来、変なやつに絡まれたりしてないかと思って」
「えっ? だ、大丈夫です。その節はすみません」

 祥真は思い付きで理由を考えたような様子だったが、月穂は心に余裕がなくてその違和感すらも気づくことができない。おどおどと頭を下げている間も、心臓が飛び出しそうになるくらい早鐘を打つ。

 月穂はあの日、祥真に『仕事外で話すほうがいい』と言われた手前、今、彼とどういうふうに向き合えばいいのか戸惑った。カウンセラーとして対応すれば、おそらく彼が目を柔らかく細めることはないだろう。

(なにを迷っているの。ここへは仕事で来ているのに。だけど……)

 月穂が自分で自分の気持ちに動揺していたとき、祥真のポケットから携帯の着信音が聞こえてきた。祥真が携帯をチェックするのを見て、月穂はそそくさとその場から離れ、お茶を淹れた。トレーに湯呑みを乗せて振り返ると、祥真が携帯に目を落としてうんざり顔をしている。

「どうかしました?」
「あの飲み会にいた須田って人からメッセージ。この間から急に来るようになった」

 祥真の苛ついた声に、月穂は咄嗟に声を上げた。

「わっ、私じゃないですよ!」

 両手をぶんぶんと横に振りながら、はたと気づく。

(よく考えたら私自身、隼さんの連絡先知らない。こんな否定する必要ないじゃない)

 月穂は手をぴたりと止めたものの、そのやり場に困る。
 祥真は携帯をテーブルに置いてソファに座った。
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