BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「知ってるよ。夕貴はありえないし、きっと金田先輩だな。大方、向こうから次の飲み会のセッティングするからとか条件出されて、俺の個人情報流したんだろう」

 祥真は気怠そうに頬杖をつき、涼し気な瞳で月穂を捕えると、再び形のいい唇を開いた。

「ここ、まだ誰か来るの?」
「あ、いえ。あと一時間くらいはどなたの予定も入ってないですが」
「そう。じゃあ、ついでにここで少し休んでいく」

 月穂の答えを聞くや否や、祥真は長い足を投げ出し、ソファに横たわる。三人がけの大きめなソファが小さく見えるのは、彼が長身だからだろう。

(え……。ここで本当に寝るの?)

 月穂は祥真が部屋にやって来てからずっと、翻弄されるがままだ。

 彼の言動の意図が読めない。
 しかし、無防備に寝転がり瞼を閉じている顔を見れば、ここへ来た理由を問い質す気もなくなる。むしろ、休んでいるところを邪魔してはいけないかと、息を顰めるようにデスクへ戻ろうとした。

 そのとき。

「小田さんはあれから来てるか?」

 祥真の口から再び『小田さん』と出てきて、月穂は思わず固まった。

 正直に言えば、あれ以降、小田は数回月穂の元へ訪れている。
 月穂の提案通り、散歩をしている流れでふらりと立ち寄るような感じだ。

 今日まで特に込み入った相談をされることはなく、ただお茶を飲んでは空を眺め、ぽつぽつと世間話をする。

(こんなに気にかけている人を前に心苦しいけれど……やっぱり言えない)

「さあ……。どうでしょうか」

 月穂は平静を装い、曖昧に返す。すると、祥真が急に語り出す。
< 40 / 166 >

この作品をシェア

pagetop