BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
思えばこれまで、ふとしたときに彼の視線は上を向いていることが多い気がした。

 ただぼんやりと宙を見ているように見えていたけれど、普段から天気を気にしていたのだと気づく。

 祥真の癖の正体がわかり、どこかうれしい気持ちで彼を見れば、驚いた顔をしている。

「……もしかして私、また失礼なこと言っちゃいましたか?」

 肩を窄め、上目でチラッと祥真を見る。祥真は軽く首を横に振った。

「いや。よく見てるなと思って……。そんな癖を指摘されることもなかったから、自分でもびっくりしてる」

 タオルで濡れた髪を拭きながら言うと、キッチンへ向かう。食器棚の扉を開き、月穂に背を向けて続けた。

「それは君の癖なのかな」

(――違う)

 月穂は心の中で即答する。

 確かに、カウンセリング中は意識的にクライアントを観察するようにしてはいるけれど、日常的に誰彼構わず観察をすることはない。

 自分でもそうわかっているからこそ、答えはすぐに出た。

(私が無意識に隼さんを見ていたんだ)

 それがどういうことなのか。

 月穂は祥真の後ろ姿を見て、胸がドキリと大きく動いた。その瞬間、カップをふたつ手にした祥真が振り返る。
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