BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
4.ノーチェンジ
翌日は火曜日。週初めの月曜と比べ、多少来院患者の数が少ない。
そんななか、月穂は午前中の業務の合間に、繰り返しボーッとしていた。
言うまでもなく、原因は昨日のこと。
あのあと、どちらもその行為には触れず。
関係のない普通の会話をぽつぽつとしてから、祥真が車で自宅まで送ってくれた。
祥真の言った通り雨はすぐ上がったのだが、部屋着では電車に乗れないだろう、と気遣ってくれた。
(昨日のことは全部、夢だったんじゃないのかな)
未だに信じがたかった。祥真とカフェに行ったことも、雨に濡れてシャワーを借りたことも、キスしたことも……。
「大和さん!」
廊下に出てすぐ名前を呼ばれ、弾かれたように顔を上げた。
「ゆっ、夕貴さん!?」
どこかで聞いたことのある声だとは感じたが、院内に夕貴がいるだなんて思いもせず目を剥いた。
「どうしてここに……?」
夕貴を見ても、具合が悪いようには思えない。
首を傾げて尋ねると、いつもと変わらず、天真爛漫な笑顔で明るく返される。
「祥真と一緒に一年に一回の身体検査を受けに来たんだ。で、俺のほうが早く終わったみたいだから、ぶらっとね」
「あ。そういうことですか」
「もしかしたら大和さんと会えるかな、って思ってたからうれしい。あ、今は話してて大丈夫なの?」
ちょっと照れてしまうことを、夕貴は臆面もなくさらりと言う。
今まで、そんなこと言われたことなどない。月穂は意識的に、にこりと口角を上げて心を落ち着かせた。
「はい。ちょうど休憩に入るところですから」
(動揺しなくても、今のは社交辞令。挨拶みたいなもので深い意味なんてない)
自分に言い聞かせていると、昨夜のことに繋がってしまう。
(隼さんも、深い意味はないのかもしれない)
そんななか、月穂は午前中の業務の合間に、繰り返しボーッとしていた。
言うまでもなく、原因は昨日のこと。
あのあと、どちらもその行為には触れず。
関係のない普通の会話をぽつぽつとしてから、祥真が車で自宅まで送ってくれた。
祥真の言った通り雨はすぐ上がったのだが、部屋着では電車に乗れないだろう、と気遣ってくれた。
(昨日のことは全部、夢だったんじゃないのかな)
未だに信じがたかった。祥真とカフェに行ったことも、雨に濡れてシャワーを借りたことも、キスしたことも……。
「大和さん!」
廊下に出てすぐ名前を呼ばれ、弾かれたように顔を上げた。
「ゆっ、夕貴さん!?」
どこかで聞いたことのある声だとは感じたが、院内に夕貴がいるだなんて思いもせず目を剥いた。
「どうしてここに……?」
夕貴を見ても、具合が悪いようには思えない。
首を傾げて尋ねると、いつもと変わらず、天真爛漫な笑顔で明るく返される。
「祥真と一緒に一年に一回の身体検査を受けに来たんだ。で、俺のほうが早く終わったみたいだから、ぶらっとね」
「あ。そういうことですか」
「もしかしたら大和さんと会えるかな、って思ってたからうれしい。あ、今は話してて大丈夫なの?」
ちょっと照れてしまうことを、夕貴は臆面もなくさらりと言う。
今まで、そんなこと言われたことなどない。月穂は意識的に、にこりと口角を上げて心を落ち着かせた。
「はい。ちょうど休憩に入るところですから」
(動揺しなくても、今のは社交辞令。挨拶みたいなもので深い意味なんてない)
自分に言い聞かせていると、昨夜のことに繋がってしまう。
(隼さんも、深い意味はないのかもしれない)