BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「隼さん、何度かメッセージは送ってるんですけど、なかなか返事くれないんですよ。だから今日会えてうれしかったあ」

 彼女の勝ち誇ったような横顔に、焦燥感が湧いてくる。
 月穂は今抱いた黒い感情に、自身でも驚いた。

 誰かを羨むことはこれまで幾多もあった。けれどもそれは羨望であって、こんなふうに心地の悪い感覚にはならなかった。

「次からメールじゃなくて、電話にしちゃおうかなあ」

 乃々のわざとらしいひとりごとに、月穂はハッとする。

(これは……この感情は、嫉妬だ。私、須田さんに嫉妬してる)

 月穂は祥真の連絡先を知らない。
 比べて乃々は、いつでも祥真と連絡がつく状況にいるのだ。

 その事実が、月穂にとって大きな差に感じられ、内心穏やかではない。

 自分が今感じたものが乃々への嫉妬だと気づいたのと同時に、祥真に対する気持ちがなんなのかがくっきりと形を表した。

「で、大和さんはどうするんですか?」
「えっ?」

 乃々のにやけ顔が目の前にあって吃驚する。

「すみませーん。実はさっき聞こえてたんですよ~。夕貴さんのこ・く・は・く♡」

 いかにも楽しくて仕方がないと言わんばかりの浮かれ口調で耳打ちされ、月穂はなにも言い返せない。
 月穂は乃々に右手を握られる。

「すごくお似合いだと思いますよ~! あんな素敵な人を振るなんてもったいない! もちろん、即OKですよね?」
「いや……それはちょっとまだ」
「えーっ。あまり時間置いたり、思わせぶりな行動はだめですよ! 早く答えてあげるべきです!」

 乃々は真剣な顔つきで説き伏せてきたかと思えば、今度はにんまりと口元を緩ませた。

「おふたりがうまくいったら、ぜひ私と隼さんの仲を取り持ってくださいね♡」

 乃々は最後まで自分のペースで会話をし、軽い足取りで去っていった。

 月穂は乃々がいなくなってからも、しばらくその場から動けずにいた。
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