BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
乃々は可愛らしく小首を傾げ、にんまり顔で階段を一段降り、月穂に近づく。

「うまくいったんですねー! 職場までわざわざ来てくれるなんて、ラブラブじゃないですか! 彼、あそこで待ってるんですよね? 早く戻ってあげないと!」

 そこまで聞いて、彼女は自分たちの会話をほぼ聞いていたのだと悟った。
 押し黙っていた月穂だが、「いいなあ」などと羨ましがる乃々に、思い切って打ち明ける。

「いえ。私、櫻田さんにはお断りしようかと思っているんです」
「ええっ! なんで!?」

 これに乃々は、院内ということも忘れたように大きな反応をする。
 目を見開き、真顔で月穂の両肩をグッと握った。

「まさか今さら大和さんも隼さん狙い……とか言いませんよね?」

 乃々はいつもと違い、声のトーンも低く無表情だ。薄暗い旧階段のせいで、より一層恐怖を感じる。

「狙うというか……。ただ、私は彼のことが気になっていて」
「合コンから彼が気になっているってことは、私と一緒でずっと狙ってたってことじゃないですか」
「その、私は合コンがきっかけではなくて……。ロスで初めて会って、それからなんだか、ずっと忘れられなかったっていうか……」

 自分の気持ちの経緯を懸命に伝えようは思っている。
 祥真を気に入っている乃々には、言わなければならないことだ。

「なんですか、それ。ロスで……って。なんで今頃そんなことを言うんですか? もっと前から言うタイミングはありましたよね?」

 でも言葉が拙すぎるうえ、タイミングが悪かった。

 乃々は憤慨し、月穂の言い分に聞く耳など持たない。
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