誠の華−ユウガオ−




息はあるのに一度も目を覚まさない彼を心配しお医者様を呼ぶと首を横に振り”今日は側にいてあげてください”とだけ言われた。


細くなり骨と皮だけになってしまった手を両手で握りしめる。


彼の温もりを決して離すまいと。


「総司…、目を開けて?いつもみたいにおはよう、雪って…笑ってよ………」


ゆっくりと呼吸を繰り返す彼の胸が上下に揺れている。

涙が彼の瞼に零れ落ちるとピクリと顔が動く。


彼はまだ生きている。


なのに、どうして目を開けてくれないの?


どうして笑ってくれないの?


総司、あなたがいないと駄目なんだよ私は。


「お願いっ…、私を置いて逝かないで!!」


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