誠の華−ユウガオ−




「…うわ」

「うわって何だよ」

「あたっ」


軽く引いている雪の頭を容赦なく叩くと土方はひょいと雪を持ち上げ整えられた綺麗な毛並みの馬に乗せた。


「わっ、私!馬乗れない!!」

「んなこたあ知ってんだよ」


そう言うと自身も馬に乗り手綱を握ると雪の腰に腕を回す。


「む、無理!落ちる!!」


「うるせえな、黙って捕まってろ。舌噛むぞ」


一瞬だけイラッとしたものの舌を噛みたくないので大人しくすることにした。


「……歳さん、随分たくさんの荷物だね。どこか行くところだったの?」


「あ?あぁ、まぁそんなとこだ」


それからはしばらくお互い無言だった。


土方は植木屋夫婦から最近の雪の様子を知り急遽江戸に帰って来たのだ。


総司が死んでからはまともに食事も取らず一日中ぼーっとしているのだとか。


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