誠の華−ユウガオ−



それだけでなく時々総司がいる錯覚に陥ることもあるらしい。


土方が雪の部屋に入った時が正にそうだった。


雪の腰回りは随分細くなり頰も痩けている。


総司の看病による過労と多大な精神的負担から来ているのだろう。


「歳さん、どこに行くの?」


「試衛館だ」


「そっかー」


現在も心ここに在らずというような感じで彼女の意識はどこにあるのか分からない。


それは土方だけでなく雪自身も分かっていないだろう。


不安定な雪を面倒見るなら彼女を良く知る者の方が良いだろうと思い試衛館へ連れて帰ることに決めた。


「見て、歳さん。平助も総司もたーこいずを忘れて行ったの。早く返してあげないと」


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