誠の華−ユウガオ−



久しぶりに食ったふでさんの飯は格別にうまかった。

これが最後だから余計そう思えたのだろう。


かつての仲間を失った試衛館は以前よりずっと寂れてしまった。


ここはもっと明るく騒がしいところだったはずだ。


目を閉じると昨日のことのように思い出すことができる。


なんのしがらみもなく生きていたあの頃を。


「歳さん」

気が緩みすぎていたようだ。

近藤さんの妻であるツネの足音にすら気づかなかっただなんて。


「どうしたこんな夜更けに」


正直会いたくなかった人と二人きりになってしまい居心地が悪い。


「あなたにお礼を言わなきゃと思って」


「礼だと?文句こそ言われてもそんなものを言われる覚えはねえぞ」


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