誠の華−ユウガオ−
だから嫌なんだ。
ここの奴らはお人好しすぎる。
ずっと我慢していたものが温かな雫となって零れ落ちた。
「ちくしょ……、なんて様だ…っ……」
「ふふ、良いじゃないですか。京では鬼だなんて言われていたみたいですけどあなたは人間なんだから。恥ずかしがることはありません」
叶わねえな。
なぁ、あんたもそう思うだろう…勝っちゃん。
「最後に一つだけ聞いても良いか?」
「えぇ」
「勝っちゃんは…俺に何を望んでいる?」
あの人がいなくなった今、俺に戦う理由はない。
それでも何故か鎖に繋がれたかのように戦から抜け出せなくなっていた。
戦う事しか能のない俺に、あの人は今何を望んでいるんだ。
真意を探るべく澄み渡る彼女の瞳を覗き込む。
白くしなやかな手を頰に添えて考える仕草を見せるとニヤリ、と右の口角を釣り上げたツネ。
「生きろ、歳」
何故だかその声が、勝っちゃんと重なって聞こえた。