誠の華−ユウガオ−



甘味処の女将さんも近くの食事所の女将さんも魚屋と八百屋のおじさんもみんないて、温かいこの江戸の町。


私が育った江戸の町。


小間物屋ではたまとお揃いの匂い袋と簪を買った。


楽しくてずっと笑っていた気がする。


雨だと言うのに、辺りは蒸し暑くどんよりとしていると言うのに、私とたまは甘味を堪能し買い物して外を駆け回った。


勇さんや歳さんたちが望んだ私の姿はこれだったのかもしれない。




「雪姉さん、今日はありがとう!凄い楽しかった!!私この簪と匂い袋大事にするね!」


「こちらこそありがとう。こんなに楽しかったのは久しぶりだったよ。因みに今日のお金は全部歳さんのだから帰ったら歳さんにもちゃんとお礼を言うんだよ?」


「わかった!!」


「よし、良い子だ」


既に雨は上がり、真っ赤な夕焼けに背を向けて帰路に着いた。


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