誠の華−ユウガオ−
試衛館に着く直前だった。
たまが思い出したと言って話を切り出したのは。
「雪姉さん、私この着物が一番お気に入りなの!大事に着てくれてありがとう!」
桃色の着物に身を包んだたまがまだ少し大きい袖を持ち無邪気に笑う。
この着物は私にとっても大切なものだ。
私が初めて江戸に来た日、歳さんと総司と三人で買いに行った着物。
「…ふふ、どういたしまして。この着物はまだ私が十の時に買ってもらったものなの。これの他にもまだ六着くらいあったかな。私の大切な着物だから、たまが着てくれてすごく嬉しい。大事にしてね」
「うん!」
まだ総司を思い出すと胸がチクリと痛む。
油断をすればすぐに涙が溢れてしまいそうだった。
でも約束したから、幸せになるって。
グッと堪えるとたまに視線を向け笑みを浮かべた。