誠の華−ユウガオ−
名前を呼ばれて振り返ると困惑したような表情を浮かべるツネさんがいた。
「もしかして…聞いてないの?」
「なに…を……?」
震える唇をなんとか動かして聞く。
「歳さんは、蝦夷に向かったのよ」
目の前が真っ暗になった気がした。
「朝あんなに怒ってたから…てっきり知ってるんだと思ってたけど……」
ツネさんの声も耳に入らない。
どうして誰も私の話を聞いてくれないのよ。
悲しみを通り越して苛立ちが募る。
いつもそうだ。
上から偉そうに命令ばっかりして来るくせに私の話は何にも聞きやしない。
私に幸せになれって言うくせにみんなが私を傷つける。
許せない。
「もうっ!!知らないっっっ!!!歳さんなんて新政府の鉛玉に撃ち抜かれちゃえば良いんだ!!!」
「……あなたなんてことを……」
「ツネさん、今日は夕餉いりません。おやすみなさい」
「ちょっ、待ちなさい!雪!!」
ツネさんの制止を振り切り自室へ篭った。