誠の華−ユウガオ−
心臓の音が聞こえる気がする。
震える手で文を開くと勇さんらしい繊細な字が連なっていた。
『雪へ
この文をお前が手にしている頃、俺は既に死んでいるだろう。こんな結果になってすまなかった。お前には辛い思いばかりさせたな。
どうしてこんなことになってしまったのか。試衛館時代からの同志はほとんど俺の元から去って行った。俺はただ武士になりたかっただけだったと言うのに。どこで道を踏み間違えたのだろう。お前なら分かるだろうか。
俺が最期にお前に手紙を書いたのは頼みがあったからだ。それも雪にしか頼むことのできないことだ。
今生きている奴らをどうか守ってくれ。
散々お前を新撰組から遠ざけようとしておいて図々しい頼み事なのは百も承知だ。
俺が死んでも歳はきっと戦い続けるだろう。あいつは人の言うことを聞くような性格でもない。もう奴を止められる人間は誰一人としていない。だから雪、お前があいつの側にいて守ってやってくれ。お前にしか頼めないんだ。
それから雪、最期に礼を言う。時を超えて俺たちの元に来てくれてありがとう。俺の妹になってくれてありがとう。お前と過ごした時は生涯の財産だ。
お前の幸せを誰よりも強く願っている。歳を頼む。
近藤勇』