誠の華−ユウガオ−
ジャリッ
「なんだ、そそっかしいやつだ。もう出たのか」
「あら、周助さん。いつ出てくるのかと思ったら今頃になってお顔を出したのですね」
「むむ…」
「血は繋がっておらずとも可愛い娘を戦へ送り出すのは胸が痛みますね」
ふでの瞳から1粒の雫が滴るのを周助は見逃さなかった。
自身より少しだけ小さな妻の肩を抱くと夕日に向かい足を進める娘の背を見つめる。
「そうだな。だが兄の最期の頼みを聞き入れ窮地へ足を踏み入れるとは自慢の子供達だ」
「本当にそうですね。さてと、夕餉のお支度を始めますね」
「あぁ、頼むよ」