誠の華−ユウガオ−



試衛館を出てからここに来るまで野宿でもしていたのだろうか、彼女はお世辞にも綺麗な格好とは言えなかった。


「美味しい、何かホッとするな。何より久しぶりのちゃんとした食事だし」


彼女のこの荷物と言い、さっきの口振りと言い、俺の元へ来るのが旅の目的ではなさそうだ。


一体どこへ行こうとしているのだろうか。


「一君、歳さんから聞いてるでしょ?総司のこと」


「あぁ、文で近況は聞いている」


「…そっかぁ……」


暫くあんまり居心地が良いとは言えない沈黙が続いた。


渡したいものとは総司に関係があるものなのか?


次々と疑問が沸き起こり耐え切れず口を開きかけた時、彼女は胸元から3つのたーこいずを取り出した。


一つは変色し、一つは欠けている。


総司と平助のものだ。


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