誠の華−ユウガオ−
「もう過去に疑問を抱くのはやめたんだ。何で死んじゃったの?何で私だけ置いていくの?何で私の仲間ばかり?ってね」
初夏の生ぬるい風が彼女の髪を揺らした。
それを煩わしそうに耳にかける仕草が最後に会った時よりもずっと大人びて見えた。
「でもこうして彼等の遺品を見ると疑問を抱かずにはいられなくなるの。私ってば本当に何も成長してないよね?笑っちゃうよ」
「俺も同じだ。救えたはずの者を救えなかったいくつもの命に同じことを思う。失ったその日から。だが俺は振り返り立ち止まることはしない。俺がそんなことをするのをあいつらも望んではいないはずだ。俺が今出来ることはあいつらの志を引き継ぎ貫くことだけだ」
ヒビだらけで触れればバラバラに崩れ落ちてしまいそうな雪の瞳が揺れる。
らしくないことを言った。
だが本心だ。
「…ふふ。かっこいいね、一君」
膝に頰をつけ下から俺の顔を覗き込む彼女は久しぶりに見た柔らかな温かい笑顔だった。