誠の華−ユウガオ−






「御時間を頂戴してすまない。是非また宜しく頼む」


酒が入っているのか少々覚束ない足取りで京の外れにある宿から出てきた男はかなり上機嫌に見える。


薄暗い闇夜を照らす月明かりがどこか冷徹さを帯びていた。

________ザッ ザッ ザッ


「っ、誰だ貴様は!」


物陰からゆったりとした足取りで姿を現した私を警戒する男。


「武田観柳斎、その御命頂戴する」


武田は刀を抜くことなく断末魔の叫び声をあげて暗殺された。


< 35 / 219 >

この作品をシェア

pagetop