サトラレル
極めつけは、彼女の名前だった。
新婦の名前は茉莉花さん。
そこまで比べられてしまうのか、と自分の名前を呪いたくなる。
茉莉花とは、ジャスミンの事。高貴な花だ。
……たかだか野の花が、ジャスミンに敵う訳が無い。
***
恨み言を言う気力も失せるくらい打ちのめされた私に、さらに追い討ちをかけたのは、最後に挨拶をした康人の言葉だった。
「茉莉花のお腹には新しい命が宿っており、この秋には私たちも父となり、母となります。三人で迎えられた今日という日をとても幸せに思い、また親としての責任の重さもあらためて感じております」
……やっぱり、そうなんだ。
ふわっとしたプリンセスラインのウェディングドレスを見た瞬間から何となく気がついてはいたけれど、こうしてはっきり聞くと……キツイなぁ。
プツンと、心の中で何かが切れたような音がした。
あぁ……
さっきからゴリゴリと切りつけられていたのって、これだったのかもしれない。