サトラレル

タベラレル。

『……猫が……食べた？……言葉？……何で？』



目を見開いたまま固まった私の足元で、白い猫が満足そうに、ぐいーっと身体を伸ばしている。


病室のベッドに寝ている私、傍らには私の母親くらいの歳頃に見える看護師さん……


どう考えても"車に跳ねられた私が入院している"っていう状況なんだろうけど、この状況の中で……白猫だけが浮いている。


そして、この状況(猫がいる事)に対して看護師さんが何も疑問を感じていない。



……以上の事から、まだこれは夢の中なんだろうと、私はまだ夢を見ているのだろうと判断をした。



「大丈夫ですか？」


看護師さんが私に話しかける。


夢のくせに、なんてリアルなんだろう。


病室の窓から射し込む柔らかな光の光景も、病院独特の消毒薬を感じる匂いも、さっき咳き込んで身体を動かした時に感じた全身の痛みも、全て現実のようで戸惑ってしまう。



『大丈夫です』と言いかけて足元を見ると、白猫が何か獲物を狙うような目付きに変わったから、私は慌ててコクコクと大きく頷いた。



さっき言葉を食べられた時に感じた、何だか自分の身体の……いや、心のどこか大切な部分を無くしてしまったような嫌な感触……


その感触もとてもリアルだったから、それをまた感じたくは無かった。



ーー夢なら、早く覚めて欲しい。