サトラレル
"樹"というワードに、また不快な気持ちを抱く。


真ちゃんにどんなに窘められようと、こればっかりは止めようがない。


私にとってはごくごく自然な反応で、生理現象で、パブロフで、ヤツの存在そのものがトラウマだ。


何なら、救助された時に身体に触られたって事実を知っただけでゾッとしたのに。


……車に跳ねられて病院に運ばれたはずなのに、おかしいと思ってたんだ。


最初に目を覚ました時に、私が寝ていたのは救急のベッドではなく、一般の病棟でもなく、この特別室と呼ばれている個室のベッドだった。


それは、救助したヤツが私が須藤 野々花(すとう ののは)だって知っていて、私の義兄(あに)が向井記念病院に務めてるって知っててそこに救急車を向かわせる事ができて、尚且つ命に関わる外傷は無いと判断できる能力を持ち合わせていたって事なんだ。


……何故かって?


だって、ヤツも医師だから。



名前を聞いただけで全身に震えが走るその男の名は、相澤 樹(あいざわ いつき)。真ちゃんとは、医大の同級生で友達だ。



私は友達だなんて、認めてないけどね!!



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