サトラレル
……で、その相澤樹が、私が車に跳ねられた所に偶然居たって訳だ。
私にしたら、なんてアンラッキーな偶然なんだと嘆いてしまったくらいなんだけど、真ちゃんは「野々が無事だったのはアイツのおかげだ」なんて、呑気に感謝してる。
……真ちゃんは、たぶん知らないんだよね。
相澤樹は、女好きで、女たらしで、女にだらしない最低の男なんだって。
「では、私はこれで失礼しますね」
小笠原さんは真ちゃんと私に向かって頭を下げると、そのまま病室を後にした。
私は膝に置いていたスマホを手に持ってメモ帳のアプリを開く。
『小笠原さんは、相澤樹の何なの?』
そう打って画面を見せると、真ちゃんの指がスマホに伸びてきた。
画面をタップしかけた指をサッと外し、『まこちゃんは普通に話せるでしょw』と打ってまたスマホを見せた。
苦笑する真ちゃん。
頭はいいのに、こういう所が天然で、医師として大丈夫なんだろうかと心配になる。
「確かにそうだよな。しかし、野々打つの早いなぁ。普通に会話してるみたいだ」
『これくらい普通でしょ?』
「いや、俺、このサーって滑らせて打つヤツ何て言うんだっけ?とにかく、苦手なんだよ。俺はこうやらないと文字が打てない」
そう言って真ちゃんはスマホの画面をタタタタタッと叩く真似をした。