サトラレル
「野々花ー。ぼんやりしてると、置いて行くよ」
挙式が終わり、招待客は教会の隣の建物の中にある式場へと案内されていた。
私はその流れには乗らず、挙式の最後に新郎新婦が飛ばしたバルーンが飛んでいった方向を、ただぼんやりと眺めていた。
澄みきった青い空に、ハートを型どったバルーンが飛んでいく光景を思い出す。
パステルカラーのピンク色の風船は、今の私の心そのもののように、ふわふわとした色をしていた。
ふわっとして、まだ悪い夢の中にいるみたいで、今にも身体から心が離れて飛んでいってしまいそうだ。
ーーコノママドコカトオクヘイキタイーー
「ーー野々花。……野々花ってば!」
後ろから肩を叩かれ、ハッと我に返る。
「……あー。ごめん、あずみん。ぼーっとしてた」
振り返ると、同期の安住 楓花が立っていた。
「野々花、大丈夫?……って、ごめん。大丈夫な訳無いよね。ごめん。無神経な事言って」
「いいよ。大丈夫。……そろそろ移動しなくちゃ」