妻時々愛人
「え?」

佳苗の言葉に、宮野は箸を止めた。

「働く?お前がか?」

「ええ。スーパーのレジ打ち。今日電話したら即採用だって。人が足りないみたい」

「いつから?」

「明日から。シフトは朝9時から夕方5時までですって」

「そうか。――働くのは、俺が減給処分になったからか?」

「・・・」

佳苗はジッと宮野を見て、
「理由のひとつね」
と、応えた。

「・・・」

沈黙の時間――。

こんな時、陽子がいてくれたらこの沈黙を笑いとばしてくれるのだが・・。

今日はデートのため不在。

結局、この沈黙は食事が終わるまで続くこととなった。



―――。


「ごちそうさま」

宮野は食べ終るとすぐに二階へ上がってしまった。

残された佳苗は、一人食事を続けた。

・・・夫婦って、一体なんなのかしらね。

佳苗はため息をついた。

あの人と結婚した時、私幸せだったはずなのに。


今の私はどうだろう?



幸せ?



・・・シアワセ?



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