妻時々愛人
「ねぇ、礼二さん。私の事、愛してる?」

理穂の言葉に宮野は、

「もちろん」

と、受話器越しに小声で応えた。

「理穂、もう切るよ」

「どうして?」

「どうしてって、ここは会社だろ」

宮野は小声で言って、キョロキョロと周りを見回した。

「会社はマズイよ」

「分かった、もう切るわ。――今日も来てくれるんでしょ?」

「分かった。終わったら行くよ」

宮野は電話を切ると、フーっと息をついた。

仕事の時には電話をするなと言っておいたのに・・。


「宮野さん」

名前を呼ばれ、宮野は慌てて振り返った。

――女子社員がにこやかに立っている。

「コピー出来たんで机に置いときましたよ」

「・・あ、ありがとう」

「大丈夫ですか?」

「え、何が?」

「凄い汗ですよ?」

「ハハっ。今日は暑いからなぁ」

と、宮野はハンカチで額の汗を拭った。
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