妻時々愛人
仕事を終えた佳苗は、喫茶店で一人コーヒーを飲みながら、窓の外を眺めていた。

――ここは宮野の会社の目の前にある喫茶店。

来るつもりはなかった。

来るつもりはなかったのに・・、気付くとここに来ていた。

ここに来てどうするの?

――わからない。

私は何がしたいの?

・・・

少し考えて、佳苗は携帯電話を取り出した。

履歴から陽子にかける。

「はい」

「もしもし、陽子?ママちょっと用事があって遅くなるから、あなた適当に夕食済ませてくれる?」

「うん。分かった」

「なるべく早く帰るわね」

―――

モヤモヤしても仕方ない。

あの人が本当に残業なのかここで確かめてやるわ。
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