妻時々愛人
「宮野さん、お疲れさまです」

「おつかれさま」

宮野はみんなに挨拶を済ませると、急いでエレベーターに飛び乗った。

午後7時。

理穂のアパートまでタクシーで15分。

最近、ずっと帰りが遅いからな。

今日はなるべく早く帰ろう。

一階に着くと、宮野は受付の女の子に軽く手を上げて足早に会社を出ていった。


向かいの喫茶店の前にタクシーが並んでいる。

宮野は道路を渡ると、先頭のタクシーに乗り込んだ。
「××まで」

目的地を告げると、タクシーは軽やかに走り出した。

『今、向かってる』

理穂にメールを送ると、すぐに返事がきた。

『早く逢いたい』



―――15分後。


運転手にお金を払って、宮野はタクシーを降りた。

アパートの階段を上がっていく。

201号室。

宮野がチャイムを鳴らすと、すぐに理穂が顔を覗かせた。

「入って」

理穂に腕を取られて、宮野は部屋の中へ引き込まれた。


・・・

・・・

・・・

これは夢?


宮野佳苗は、夫が消えたアパートの前で呆然と立ち尽くした。
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