妻時々愛人
佳苗は気付かれないように角からそっと覗いてみた。

宮野がアパートの階段を上がって行くところだった。


ドクン

ドクン


――佳苗の心臓は、破裂しそうなほど脈うっていた。

階段を上がってすぐの部屋で宮野がチャイムを鳴らすと、すぐに女が顔を覗かせた。


若い女だった。


女に手を引かれ、宮野は部屋の中へと吸い込まれていった。



――――。



あれからどう帰ったのか、覚えていない。

佳苗はいつの間にか、家の前に立っていた。

「――ただいま」

「あ、ママおかえり」

陽子が笑顔で出迎えてくれた。

「・・・ごめんね。ママ、疲れちゃったから少し寝るわ」

「大丈夫?」

陽子が心配そうに覗き込む。

佳苗は小さく頷いて、二階に上がっていった。
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