妻時々愛人

「ただいま」


宮野がダイニングに入ってくると、佳苗はニッコリと微笑んだ。


「おかえりなさい」


「珍しいな。起きてたのか」


「ええ。ご飯は?」


「食べてきた」


『――彼女の手料理?』


そう言おうとして、なんとか呑み込む。


「そう・・。毎日残業で大変ね」


「・・ああ」


宮野はネクタイを緩めて、ソファーに座りこんだ。


佳苗はジっと宮野を見つめていた。



―――ねぇ。


あの女を抱いてきたの?



「ねぇ、あなた」


「ん?」


「――私の事、愛してる?」


宮野は驚いたように佳苗を見た。


「なんだよ、突然?」


「愛してる?」


「・・・もちろん」


「そう」


佳苗は涙が出そうになるのを、必死に堪えた。


嘘つき


嘘つき!


あなたが愛してるのは、あの女でしょ!


「――私、もう寝るわ。おやすみ」
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