妻時々愛人
「すごい人ね」


佳苗は人混みの中で言った。


「オープンして間もないからなぁ。仕方ないよ。―――どうする?」


「私、観たい映画があるの」


―――その時、


宮野の携帯が鳴った。


マナーモードにしていたので佳苗は気付いていない。


ズボンのポケットからそっと携帯を取り出した。


メール?


【今すぐ逢いたい】


――理穂からだった。


「・・・」


宮野はすぐに携帯を閉じた。


『佳苗との時間を楽しみたい』


今はその気持ちが全てだった。


「あなた、どうかしたの?」


「いや、なんでもないよ。映画観に行こうか」
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