崩れる絆
4⃣

✩✩回復


彼は、申し訳なさそうに
「熱はひいたか?」
と、訊ねたので
「今は、落ちついているはず。」
と、答えた。

彼は、私が何も言わないから
気づいていないと
思っているのか
謝るわけでもなく
その後は、普段とかわりなく
過ごしていた。

私の中には彼に対して
イライラするわけでもなく
モヤモヤするわけでもなかった。

ただ·····悲しかった。

20年も連れ添った相手に
思いやりも·····ないのかと·····

私は、
『今、彼が帰ってきた。』
と、純夏さんに知らせた。

純夏さんは、
スッゴく怒ってくれて
私には、そのことが嬉しかった。

『晶、夜ご飯大丈夫?』
『はい。
純夏さんが買ってきてくれたのを
食べて薬飲みます。』
『ばか。そんなんで栄養つかないよ』
『うふふっ、ありがとう。』
『笑い事じゃ、ないよ。』
私は、薬を飲んで
着替えをして
再び眠りについた。

次の日に目が覚めると
熱も平熱になっていた。

私は、自分の着替え分を
洗濯をしたり
シーツを変えて毛布を干したりした。

彼は、起きてきて
「大丈夫なのか?」
と、訊ねたので
「はい。大丈夫だと思います。」
と、言うと
ホッとした顔をした。

それは、
私が治ったからか·····

昨日自分が病人を置いて
出ていった事をとがめられなかった
からか·····

私には、わからなかったが
私の中では、もうどうでも良かった。
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