わたしはあなたにときめいてます
「本当かい? 愛十くん。
……その子が?」

カメラを持っている陽気でにこにこしているおじさんがわたしを見て、顔をこわばらせた。

周りの人達も不安そうな顔でわたしを見ている。

まぁ…そういう反応になりますよね……。

「何でもいいから…。
女性物のジャケットをくれないか…?」

「……分かったわ…。
どうぞ」

女性口調でやけに黒髪が光っている男性は、20着以上はある洋服の中からジーパン生地のジャケットを選び、彼に渡した。

「ありがとう…」

彼は渡されたジャケットを右肩にかけると、わたしの右肩にかけてた黒のショルダーバッグを取って

「持っててもらえるか…?」

「……はい」

英子さんの側に居て、彼女ともめていた生真面目そうな男性にわたしのバッグを渡す。

勝手に…。返し…。

「動かないで…」

彼は右肩にかけていたジャケットを手にすると、わたしに羽織らせると、わたしの右腕と、左腕をそれぞれ掴んで袖を通させた。

「わたしはモデルやりませんよ」

勝手に決めないで…。

「助けて欲しい…。

君しか居ないんだ…」

そんな事…。

ドクン。

言われても…。

ドクン。

「愛十くーん。
撮影始めるから、彼女と来てくれ」

「分かりました…」

「わたしは」

「大丈夫…。
俺がついてる…」
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