わたしはあなたにときめいてます
だから…。
『香澄。お母さん、彼氏の家で一緒に住む事になったから、この家は引き払う事にしたの。
だから、香澄は私の友達の家に行きなさい。
生活費や学費は心配しないで。お母さんが払うから。
分かった?』
『分かりました』
母はわたしから離れたんだ…。
母のためにしたのに……。
「お母さんから、連絡来ませんか?」
スマホをジーッと見つめていたわたしに声をかけてきた吉広(よしひろ)さん。
「はい…。
もう離れてから1年経ったのに、その間に1回も連絡がないなんてわたし、忘れられたんですかね?」
「まさか。
可愛い娘を忘れるわけがないでしょう…」
「わたしは可愛い娘なんかじゃない!!!」
わたしの突然の大声に驚いたのか、目を丸くしている吉広さん。
「すいません!
八つ当たりなんかしてしまって…」
「いえ。
もっと八つ当たりして下さい」
「…えっ?」
「言ったでしょう?
私は君のどの感情をぶつけられても受け止めると。
だから、どんどんぶつけて下さい」
「はい…。
ありがとうございます」
わたしが自分の感情をそのまま見せられる唯一の存在の吉広さん。