わたしはあなたにときめいてます
「あなたの父親があなたの良い父親になると思ったから、あなたの母親は結婚しようと思ったんだと思います」

「でも、母さんは結婚を嫌がってたって……」

「最初はそうだったのかもしれないです。血の繋がりのない息子を大事にしてくれるか。不安になるのは当然です。それにあなたの父親の事をすごく好きではなかったのかもしれない。でも、嫌いではなかったはず。一番近くで二人を見てきたあなたなら、それが分かるでしょ」

「ああ…分かるよ……。
でも…その事を知った8才の俺は……分からなかった……。
母さんは俺のせいで…不幸になったんだって思ってしまった……。
俺が居るから…母さんは幸せになれない……。
だから、俺は居なくなる事にした……。

火曜日だった……。学校で授業があるけど、俺は教科書やノートは一冊も入れず、家にあったお菓子をランドセルいっぱいに詰めて…いつも通りの時間に家を出た……。もちろん、行き先は学校じゃない……。行き先なんて決めてない……。ただ遠く…遠く…母さんに見つからない所まで行ければいいと俺はひたすら歩き続けた……。
でも…自分が思い描いていた遠くまで俺は行く事が出来なかった……。警察官のおじさんに捕まったから……」
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